空はなぜ青いのか、たどると火星の空にたどり着く話
ひとことで言うと
空気の分子が波長の短い青い光を強く散らし、その光が空のあらゆる方向から目に届くため、空は青く見えます。火星では細かい塵が光を散らすので、昼の空は赤茶色、夕方は太陽のまわりが青っぽくなります。
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通勤中にふと見上げる空は、いつも当たり前のように青いですね。でもその「当たり前」を少しだけ疑ってみると、実はとても不思議な現象が隠れています。今日はこの空の色の謎を、根っこから一本の筋でたどっていきます。

太陽の光は、私たちの目には無色でまぶしい光にしか見えません。でも実際にはその中に、赤からオレンジ、黄色、緑、青、そして紫まで、あらゆる色の光が混ざり込んでいます。この事実こそが、これから話すすべての謎を解く鍵になります。

では、なぜその混ざり合った光から青だけが目立って見えるのでしょうか。答えは、空気を作っている小さな分子にあります。ここから空の色の謎解きを始めていきましょう。

空気の分子は、光の波長よりもずっと小さいものです。この小さな粒に光がぶつかると「レイリー散乱」という現象が起きて、光があちこちに散らばっていきます。

このレイリー散乱には面白い性質があります。散らばる強さは光の波長の4乗に反比例するため、波長が短い青や紫の光ほど、圧倒的に強く散らばっていくのです。

散らばった青い光は、空のあらゆる方向から私たちの目に届きます。特定の一点からではなく、空全体からまんべんなく青が降り注いでくるのです。だから見上げた空は、隅々まで青く染まって見えます。

ここまでで「空はなぜ青いか」の答えは出ました。でも本当に不思議なのはここからです。青より紫の方が、もっと強く散らばるはずなのに、空はなぜ紫色に見えないのでしょうか。

この謎には、3つの理由が重なって関わっています。ひとつ目は、そもそも太陽の光に含まれる紫の成分が、青に比べて少ないということです。

ふたつ目は、大気の上層で紫の光の一部がすでに吸収されてしまっていることです。地上に届くころには、紫の量はさらに減っています。

そして3つ目は、私たち人間の目そのものにあります。人の目は紫よりも青に対して敏感にできているため、同じ量の光が届いても、脳は青をより強く感じ取ってしまうのです。

光の量、大気での吸収、そして目の感度。この3つが重なることで、空は紫ではなく青として私たちの目に映ります。ひとつの理由だけでは説明できない、絶妙なバランスの上に空の青さは成り立っているのです。

さて、ここまでは晴れた昼間の空の話でした。ですが同じ空が、夕方になるとまったく違う顔を見せます。なぜ夕焼けはあんなに赤く燃えるのでしょうか。ここからが、この動画の本題です。

太陽が地平線近くまで沈むと、その光が大気の中を通り抜ける距離は、昼間よりもずっと長くなります。長い道のりを進む間に、青い光は途中で散らばり尽くしてしまいます。

残るのは、波長が長くて散らばりにくい赤やオレンジの光だけです。この生き残った光が私たちの目に届くことで、空は真っ赤に、あるいは橙色に染まって見えます。

では、その空に浮かぶ雲はなぜ白いのでしょうか。実は雲の白さは、青空とはまったく別の仕組みで生まれています。

雲をつくっているのは、空気の分子よりもずっと大きな水滴です。この大きさになると起きるのは、レイリー散乱ではなく「ミー散乱」という別の現象になります。

ミー散乱では、波長による違いがほとんど出ません。赤も青も緑も、ほぼ同じように散らばっていきます。そのすべての色が混ざり合った結果、私たちの目には真っ白な雲として映るのです。

雨上がりの空にかかる虹にも、実は決まった法則があります。虹は、空気中に漂う無数の水滴の中で光が屈折し、内側で一度反射して、もう一度屈折して外に出てくることで生まれています。

太陽を背にして立ったとき、この虹が見える角度はいつもほぼ決まっています。だからこそ虹は、空のどこにでも現れるわけではなく、太陽の反対側の決まった位置にだけ弧を描きます。

さらによく見ると、主虹の外側にもう一つ、薄い虹が見えることがあります。これは副虹と呼ばれ、水滴の中で光が2回反射することで生まれるため、色の並びが主虹とは逆になっています。

ここでよくある誤解にも触れておきたいと思います。海が青いのは空の色を映しているからだ、とよく言われますが、それだけでは説明がつきません。

実は水そのものにも、赤い光をわずかに吸収するという性質があります。水の層が厚くなるほど赤が吸収されて消えていき、青だけが残っていきます。だから深い海ほど、より濃い青に見えるのです。

さて、ここまで地球の空の話をしてきましたが、同じ太陽の光を浴びていても、火星ではまったく逆のことが起きています。火星の大気は薄く、そこには細かい鉄分を含む塵が絶えず漂っています。

この塵の影響で、火星の昼の空は青ではなく、赤みがかった黄土色に見えます。地球とは正反対の色合いです。

ところが、火星の夕日はなんと青く輝きます。塵の粒が青い光を太陽の方向へ強く前方散乱させるため、沈む太陽の周りだけがひんやりとした青に染まるのです。この光景は、NASAの探査車によって実際に撮影されています。

青い昼の空、赤い夕焼け、白い雲、決まった位置に出る虹。これらはすべて、光の波長と粒の大きさという、たった一つの原理から枝分かれして生まれていました。

そして火星まで目を向けると、同じ物理法則が、まったく違う色の空を作り出していることも見えてきます。次に空を見上げるとき、その青さの裏にある小さな粒たちの働きを、少しだけ思い出してみてください。
もう少し詳しく
空の青は「散らばった光」の色
太陽の光は白っぽく見えますが、虹の7色がすべて混ざっています。この光が大気に入ると、窒素や酸素の分子にぶつかって四方八方へ散らばります。分子は光の波長よりずっと小さいため、このとき起きる「レイリー散乱」では、波長が短い光ほど強く散らばります。強さは波長の4乗に反比例するので、青い光(約450nm)は赤い光(約700nm)の5〜6倍ほど散らばりやすい計算です。
散らばった青い光は空のあらゆる方向から目に届くので、空全体が青く見えます。地平線近くの空が白っぽいのは、光が長い距離を通るあいだに何度も散らばり、色が混ざり直すためです。
紫の空にならないのはなぜ?
紫は青よりもさらに強く散らばります。それでも空が紫に見えないのは、主に「太陽の光にもともと紫が少ない」ことと「人の目が紫より青に敏感」なことの2つで説明されます(英国気象庁の解説もこの2点を挙げています)。
動画では3つ目の理由として「大気の上層で紫の光が吸収される」と紹介しました。ただ、上空のオゾンが強く吸収するのは主に目に見えない紫外線で、目に見える紫の光がそこで大きく減るわけではありません。主な理由は光の量と目の感度の2つと考えるほうが正確です。
夕焼け・雲・虹は、それぞれ別のしくみも関わる
夕方は太陽の光が大気の中を長く通るため、途中で青い光が散らばって減り、赤やオレンジの光が多く残ります。「赤だけが残る」というより「赤い光の割合が増える」イメージです。空気中の塵や細かい粒子も青い光を散らし、夕焼けの赤みを強めます。
雲の水滴は光の波長よりずっと大きく、どの色もほぼ同じように散らす「ミー散乱」が起きるため、白く見えます。いっぽう虹は散乱ではなく、雨粒の中での屈折と反射によって生まれ、太陽と反対側の方向からおよそ42度の位置に現れます。光が雨粒の中で2回反射すると、外側に色の並びが逆の副虹ができます。
動画では「たった一つの原理」とまとめましたが、虹は屈折と反射、海の青は水が赤い光を吸収するしくみで、散乱とは少し別の話です。
火星の空:昼は赤茶色、夕方は青っぽい
火星の大気は地球よりずっと薄く、主成分は二酸化炭素です。地面の鉄分がさびて赤くなった細かい塵が舞い上がって大気中にただよっているため、NASAによると、人の目には昼の空がかすんだ赤っぽい色に見えるといいます。
夕方になると、太陽のまわりの空が青っぽくなります。NASAの探査車キュリオシティは、2015年4月15日にゲール・クレーターでこの夕日をカラーで撮影しました。NASAの説明では、火星の細かい塵は青い光を比較的通しやすく、青い光は太陽の近くの空にとどまり、黄色や赤の光はもっと広く散らばります。光が大気を長く通る日没前後に、この効果がいちばん目立ちます。
なお、青くなるのは太陽のまわりの空で、空全体が青に変わるわけではありません。NASAの子ども向け解説では「青灰色」と表現されています。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- Why Is the Sky Blue?(NASA Space Place)
- Why the sky is blue and sunsets red(Met Office(英国気象庁))
- Rainbows: optical wonders(Met Office(英国気象庁))
- Sunset in Mars' Gale Crater (PIA19400)(NASA/JPL-Caltech/MSSS/Texas A&M Univ.(NASA Photojournal))
- Mars: Facts(NASA Science)



