なぜ炭酸水は開けた瞬間だけ勢いよく泡立つの?
ひとことで言うと
炭酸飲料には、圧力をかけて二酸化炭素がたくさん溶かしてあります。フタを開けて圧力が下がると、液の中や容器の表面にある小さな気体のつぶを「種」にして泡が一気にふくらむため、開けた直後がいちばん勢いよく泡立ちます。
YouTubeで見る動画の内容

炭酸飲料のフタを開けた瞬間、シュワッと泡が噴き出すこと、ありますよね。

実は炭酸水の中には、二酸化炭素が高い圧力で無理やり溶け込んでいます。

フタを開けると圧力が一気に下がり、閉じ込められていた気体が逃げ場を求めて泡になります。

さらに振ったり温めたりすると、気体が液体から出やすい状態になり、勢いはもっと強くなるんです。

だから炭酸を開けるときは、少しずつゆっくりがコツなんですね。
もう少し詳しく
圧力をかけるほど、たくさん溶ける
気体が液体に溶ける量は、液体の上にあるその気体の圧力に比例します。これを「ヘンリーの法則」といいます。炭酸飲料は、この性質を利用して、ふつうの空気の中ではとても溶けきれない量の二酸化炭素を、圧力をかけて溶かし込んだものです。市販の炭酸水3種類を調べた研究では、1リットルあたりおよそ3〜7グラムの二酸化炭素が溶けていました。
フタが閉まっているあいだは、液の上のすき間(ヘッドスペース)にも高い圧力の二酸化炭素がたまっていて、液の中の量とつり合っています。ところがフタを開けると、まわりの空気に含まれる二酸化炭素はごくわずかなので、つり合いがくずれ、溶けていた二酸化炭素のほとんどが外へ出ていこうとします。
泡には「種」が必要
動画では「閉じ込められていた気体が逃げ場を求めて泡になります」と紹介しましたが、実は炭酸飲料くらいの濃さでは、液の中で泡が勝手に生まれることはほとんどありません。泡ができるには、ある大きさ以上の小さな気体のつぶ(気泡核=きほうかく、泡の種)が必要です。
ビールを使った研究によると、泡の種になるのは、グラスの表面の細かいすき間や、中空の小さな繊維(セルロース繊維)の中にとじこめられた、ごく小さな気体のポケットです。冷えたビール(6℃)では、半径およそ0.7マイクロメートル(1000分の1ミリより小さい)以上のポケットでないと泡を生み出せないと見積もられています。
フタを開けた直後は、液の中や容器の表面にある気体のつぶが一斉にふくらむため、勢いよく泡立つと考えられます。その後は泡の種が限られるため、決まった場所から細い泡の列が上がる、落ち着いた泡立ちに変わります。なお、「開けた瞬間だけ」に見えても、二酸化炭素はそのあとも泡や液の表面から少しずつ抜け続けていて、だから時間がたつと気が抜けていくのです。
振ると強くなるのは「泡の種」が増えるから
動画では「振ったり温めたりすると、気体が液体から出やすい状態になる」と紹介しました。温める場合はそのとおりですが、振る場合は少し理由がちがいます。
振っても、液に溶けている二酸化炭素の量そのものが変わるわけではありません。マギル大学の解説によると、振ると上のすき間にあった気体が液の中にまき込まれ、細かい泡となって液全体に散らばります。中の圧力が上がるわけではない、とも説明されています。
この細かい泡が、開けたときに泡の種としてはたらきます。圧力が下がった瞬間、まわりに溶けていた二酸化炭素がそれぞれの泡に流れ込んで一気にふくらむため、液全体から泡が噴き出すのです。ビールびんの口を上からたたくと数秒で泡があふれ出す現象を調べた研究でも、衝撃で泡が非常に多くの小さな泡に分かれ、気体と液体がふれ合う面積が増えることで、二酸化炭素が急速に泡へ移ることが示されています。
温めると強くなるのは、溶けていられる量が減るから
温度が高いほど、二酸化炭素は液に溶けにくくなります。先ほどのビールの研究では、同じ圧力のもとで6℃のときは20℃のときの約1.5倍の二酸化炭素を溶かしておけると計算されています。逆にいえば、温まると溶けきれない分が出てきて、容器の中の圧力が上がります。炭酸水の研究でも、びんの中の二酸化炭素の圧力は温度によって大きく変わり、同じ濃さなら温度が高いほど泡の種がはたらきやすく、泡の数が増えると見積もられています。
東京都が未開栓のペットボトル飲料を60℃の環境に置いたテストでは、炭酸飲料はすべての容器が変形しました。夏の車内などに置いた炭酸飲料は、開けるときにキャップが飛ぶおそれもあるとして注意が呼びかけられています。
上手に開けるには
動画で紹介したように、フタは少しずつゆるめると、泡が上がってきたときにいったん閉め直せるので安心です。冷やしておくことも、泡立ちをおさえるのに役立ちます。
なお、「振った缶は指でトントンとたたくと噴き出さない」という言い伝えを確かめた実験(査読前の論文)では、1000本あまりの缶ビールを使っても、たたいた缶とたたかない缶でこぼれる量に差は見られませんでした。研究者たちは、振ってしまったら泡が落ち着くまで待ってから開けるのが、こぼさないための唯一の対策だろうとしています。
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出典・参考資料
- How Many CO2 Bubbles in a Glass of Beer?(Liger-Belair G. & Cilindre C., ACS Omega, 2021)
- Carbon Dioxide in Bottled Carbonated Waters and Subsequent Bubble Nucleation under Standard Tasting Condition(Liger-Belair G., Journal of Agricultural and Food Chemistry, 2019)
- Physics of beer tapping(Rodríguez-Rodríguez J. et al., Physical Review Letters, 2014)
- Shaking a Champagne Bottle(McGill University Office for Science and Society, 2019)
- 暖かくなる季節、ペットボトルの飲み残しに注意!(東京都生活文化局(東京くらしWEB), 2022)
- 暑くなる季節、ペットボトルの飲み残しに注意!(東京都生活文化スポーツ局, 2022)
- To beer or not to beer: does tapping beer cans prevent beer loss? A randomised controlled trial(Sopina E. et al., arXiv(査読前の論文), 2019)



